日本工芸会東日本支部

第56回東日本伝統工芸展 受賞者のコメント

東京都知事賞

省胎七宝器「黄葉」 種澤有希子(諸工芸)

この度は栄えある賞をいただきまして、ありがとうございます。これまでにご指導ご支援いただきました多くの方々へ、心より感謝申し上げます。
昨秋、ようやく色付いてきた銀杏並木が一晩の嵐で見事に散り、小さな公園が黄色い絨毯を敷き詰めたように一変しました。様々な色が折り重なる中、本来ならば落葉するにはまだ早い葉の淡い色合いと、柔らかく厚く積もる様がとても印象的でした。
本作は、その時の情景をモチーフにしています。淡白な色調に変化をつけるよう銀箔を使用し、朝日に映える銀杏の葉を部分的に配しました。
省胎七宝は七宝の技法の一つで最終的に胎となる金属を取り除くため、一見してそれと分かる透明感が特徴です。その美しさに憧れて取り組み始めたのですが、失敗も多く、制作する度に新たな発見と反省の繰り返しです。そのような中で今回のご評価を頂きましたことは、大変な励みとなります。
これからも、自分らしさを追求し精進して参りたいと思います。


岩手県知事賞

変塗箱「ミルフィーユ」 木村正人(漆芸)

この度は、思いもよらずに賞をいただだく事ができ、大変うれしく思います。
今回の作品は初霜の降りた森の風景を丸箱に表現しました。素材はケヤキの挽物で、側面を3種類の変り塗技法を用いました。シルバー部分は落葉初霜が降りたイメージ。青の部分は空のイメージ。紋紗の部分は大地のイメージ。天板の黒は、湖面のイメージです。湖面の静けさを引き立たせる為、荒々しい肌合いの紋紗塗を用いています。側面の模様自体も何度も漆を塗り重ねまた、それぞれの技法の組み合わせでも、層を作りミルフィーユとしました。
津軽塗の特徴でもある、何度も漆を塗り重ね、底から浮かび上がってくる、模様の奥深さを追及していきたいと思っております。ありがとうございました。


朝日新聞社賞

「girar」 増原嘉央理(陶芸)

この度は思いも寄らずこのような素晴らしい賞を頂きまして誠に有難うございます。
初出品ということもあり、まさか賞をいただけるとは夢にも思っておらず未だに驚きと喜ばしい気持ちでいっぱいです。これもひとえにご指導ご鞭撻を賜りました諸先生のおかげと心より感謝申し上げます。
此度の作品は大学在学中、卒業制作の際に初めて制作した作品であり、自身の原点となた作品でもあります。卒業後も細々と続けてきた事は不安の中での何よりの励みとなりました。
題の“girar”とは西語で“回転”を意味します。森羅万象、不変心理を形作るものを内外の変化と流動性で表現しました。
今後もこの受賞を励みに、また、感謝の心を忘れずに支えてくださった方々に襟を正して、なお一層精進して参りたいと信じます。今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申しあげます。
ありがとうございました。


日本工芸会賞

木沈金合子「鳥海まりも」 金千鶴(漆芸)

この度は日本工芸会賞を戴きありがとうございました。これまでご指導いただいた先生方、制作を続けられる様支えて下さる皆様のおかげと感謝申し上げます。
作品は栃材の合口造りの挽物に布着せ、本堅地下地、塗りを施した合子です。
秋田県と山形県に跨る鳥海山の麓、獅子ケ鼻湿原に希少種の苔が絡み合ってできた別名「鳥海まりも」が生息しています。ドーム型の蓋を放射状に円を点彫りし緑漆を象嵌することでまりもに見立て、艶仕上げ後に伏流水を沈金で表現し金消粉を入れ仕上げに夜光貝で水を強調しました。象嵌と沈金が重なり交わることで立体感と動きを出せるよう試みました。東北の短い夏。美しい涼の1ページを作品を通じて感じてもらえたらと思います。
秋田県には漆芸を目指す若い世代が少ないので少しでも漆に興味を持ってもらえる様にこれからも精進して参りますので今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。


根津美術館館長賞

江戸小紋絽着尺「梨の切口」 小宮康正

この度は栄えある賞を賜りありがとうございます。
思わぬことに驚き身の引き締まる思いです。
生地は、経糸に駒撚りの糸を使った張りとしなやかさの在る絽です。
夏にふさわしい明るいグレーで染め、裏は少し淡い色にしました。
着た時の姿を思い描き、生地、色彩、柄を選び総合的に考え作品を作りました。
梨の切口は伝統的な柄ですが、型彫師が彫るにはこの柄に耐えられる渋紙が無く、和紙から作らなくては、彫ることが出来ません。
今の江戸小紋の維持は、難しく厳しい時代が来ています。
これからも、もの作りの原点を忘れず、次の世代につながる仕事を、して行きたいと思います。


MOA美術館賞

硝子角鉢「沖つ波」 由水直樹(諸工芸)

この度の受賞、大変嬉しくまた重く受け止めております。
自分としてはまだまだ課題の残る作品だと感じており、身に余る事だと恐縮しております。この評価を真摯に受け止め、更によい作品が作れる様、精進して参ります。

【作品について】
粘土原型から耐火石膏の鋳込み型を起こし、ガラスの粉や粒を型に入れて焼成し、およそ1週間かけてゆっくり冷やします。その後、グラインダーやリュ―タ―、ヤスリ等を使い加工し完成させます。
作品は、高い、荒い波が連綿と続くイメージです。強く激しい中に規則性と不規則性があり、波の向こう側を、もしくはその後の穏やかな海を想像して頂ける様な作品であればいいと思っております。
また、この場をお借りして師や仲間達に篤くお礼申しあげます。


三越伊勢丹賞

栃拭漆盛器「浮葉」 木村作江(木竹工)

光栄ある賞を戴き有難うございます。
今回、非対称の形の構成を試みました。舟や葉などのイメージを基に多様な曲線や面の組み合わせで動きを出し、非対称でありながら調和のとれた形を表現するよう努めました。
色は周囲を暗めにしながらも、中を少し明るめにして変化をつけ木の素材を生かしつつ全体の軽やかさを表現してみました。
制作中、作品を観ている内に水に浮いている葉に見えたので作品名を「浮葉」としました。
これからも制作に励んで参りたいと思います。
この度は誠にありがとうございました。


川徳賞

吉野織帯「霜夜」 大髙美由紀

この度は、川徳賞をいただきまして誠にありがとうございました。
作品は、平織の中に真田紐のような畦組織が経・緯の格子になってあらわれる吉野織です。平織部分には、手括りによる経緯絣を用いています。経絣は、絣足を地色に消え入るようにぼかして染め、色違いの絣を斜めにずらしています。
身を切るような寒さの厳しい夜、霜が少しずつ降り、静かに地表を白く染めてゆく、そんなイメージを表現いたしました。
東日本支部展に帯を出品したのは今回が初めてです。思いがけないこの受賞を機に、帯での表現もさらに模索してまいりたいと存じます。


日本工芸会東日本支部長賞

染付菜の花組皿 木村美智子(陶芸)

この度は思ってもみなかった賞をいただきまして本当にありがとうございました。
この作品は、私の育った静かで美しい自然に恵まれた里山での「優しい時間」を表現しました。磁土を使用し、ロクロにて丸皿を挽き、高台削りのあと、口縁をカンナとヤスリを用いて三角に削り出しております。なだらかな山の稜線を意識し、柔らかいラインになるよう心がけながら削りました。染付けは、ルリ呉須を用いております。
春の暖かな光に向かって成長する菜の花を通して、「希望」を表わせたらと思い、構図に注意を払いながら描きました。
まだまだ自分の思いを作品に込めるには至らず、これからも努力しなければと思っておりますが、今回、このような賞を頂戴できたことは、次の作品作りへの心強い「希望」となりました。これまで、私にたくさんの心と技術を教えて下さった先生方にあらためて感謝申し上げます。


奨励賞

金魚蜂 安田直子(陶芸)

この度は奨励賞を頂きまして、ありがとうございました。自分の人生にこのような日が来るとは、想像もしていませんでした。喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。
作陶を始めて以降金魚ばかりを描いています。師匠の家の甕に飼われている金魚は、わたしにとって修行の友です。飼い主など知らん顔で気持ち良く泳ぐその姿は、とても自由で生き生きとして見えました。その動きの残像だけを器の中に投影したいと思って白の中に金魚だけを、鉢の中だけでなく器全体に描いています。金魚の赤をより強く印象付けるために白化粧を厚くかけ、より白く焼けるように心がけました。
今年は修業をはじめて丸十年、あらゆる勉強の機会を惜しみなく与えて下さった師匠の元を独立します。このような年に賞を頂けたことは何よりの励みになりました。感謝の気持ちを胸に、これからの厳しい道程にも諦めることなく精進して行きます。今後ともご指導下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。


奨励賞

友禅着物「こもれび」 大貫路子(染織)

この度は思いがけず奨励賞を受賞させて頂き、大変嬉しく光栄に思っています。ありがとうございます。
今回の作品は「こもれび」というタイトルの通り葉や枝のすき間からもれてくる光、また光が当たり輝く緑をモチーフとしています。
技法としては、枝模様の部分を先に染めた後に糊を落とし、その後にたたき糊を行いながら色を重ねていっています。糊は色糊も使用しています。
同じ色であっても、上に重ねる色によって色合いの変化があるのが面白いと思い、色の重なりにも気を付けながら制作しました。また、光の透明感や輝きをどのように、表現しようかと試行錯誤を重ねました。
色の重なりによる表情の面白さやこもれびの光を感じて頂けたら幸いです。
今回の受賞を励みに今後とも精進しながら良い作品を作っていきたいと思っています。


奨励賞

皆朱乾漆盛鉢 町田俊一(漆芸)

このたびは奨励賞を授与いただき、誠にありがとうございました。
賞をいただきました作品は私が多年にわたり制作を続けている、乾漆の器の一環として作成したもので、乾漆ならではの造形を活かすよう心がけて制作したものです。
基本的には八角の盛鉢ですが、下半分の直線的で柔らかい稜線が、上に行くにつれ、鋭利で緩やかなカーブを描く形状にするために、原型を上下二つに分けて作成し、布を貼る段階で一つにして作成しました。
上塗りは艶の消えた朱で仕上げてますが、私が岩手県で仕事をしていることもあり、地元、浄法寺産の盛辺漆を自分で精製した素黒目漆を使い続けています。純粋な浄法寺産盛漆の自然な艶肌を活かせるように心掛けております。
これからも乾漆ならではの造形を心掛けて行きたいと思っておりますが、更に精度を高めつつ、大らかで、柔らかな動きを感じることのできる作品を作れるよう、造形、精製、髹漆、すべての技術技法について今回の受賞を糧に精進を続ける所存です。
どうぞ今後ともご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。


奨励賞

四方釜「焦点」 鈴木成朗(金工)

この度は奨励賞を頂き誠にありがとうございます。
鋳物がその他の金工技法と大きく異なるのは全行程のおよそ半分は金属に触れないという事です。逆算の仕事ともいうでしょうか、とにかく地金が上手く流れるため手を尽くして鋳型を作ります。そのため最初の計画通りに完成させることが全てであり、途中で如何なる想いを抱こうとも変えられないという事も大きな特徴です。
その中でも私が作っている『茶の湯釜』とは、サイズや環付など制約も多いのですが、逆にその制約の中に自分が想い描いた表現ができたときは喜びも大きく楽しいものです。この作品は例えれば凧糸のような線が立体に巻き付いている様をコンセプトとし四方という造形に施してみました。線紋様によって視覚的に立体感を繋ぐことが感じられたら面白いと思っています。
まだまだ技術も拙く茶の湯への造詣も浅い私は毎日が勉強ですが、作家個人としてだけではなく南部鉄器という伝統工芸の産地の発展と継承に少しでも貢献できるよう頑張っていきたいと思います。


奨励賞

千筋組提盤「凍水」 江花美咲(木竹工)

この度は奨励賞を頂きましてありがとうございます。
今までの出品作と違う技法に挑戦した作品が評価されまして、大変嬉しく思います。
今回制作した千筋組提盤「凍水」は、冬の地面に張った氷とその下を流れる水をイメージして表現しました。
一昨年の冬の日に見た氷と水による模様に心惹かれ、提盤として制作しました。
今回は千筋組の技法を本体に使用しました。四種類の幅の違う竹ひごを並べて、氷の透明感と固さを表しました。
表面の柾ひごと裏面の網代編で流れる水を表しました。柾ひごの並びに動きを付けてより水らしくしました。
この度の受賞を励みにより一層精進して制作に打ち込みたいとおもいます。


奨励賞

木彫木目込「紡ぐ」 竹内文子(人形)

思いがけず賞をいただきまして、大変嬉しく感謝しております。ありがとう存じました。今迄頑張って続けて来て良かったと心より思っております。
何を作ろうかと、毎回テーマ探しに悩んでいるのですが、今回は以前旅先で出会ったチベット族の人々の風俗によせて、働く女性の姿に焦点を当ててみました。どこか懐かしく、力強い居ずまいの女性の様子を表現すべく桐材を彫り、胡粉を塗り、布を木目込み、面相を書く作業をくり返して、思いを人形に重ねる仕事が評価され、大変嬉しく思います。
内外に厳しい現実の在る中で、好きな人形作りに日々を過ごしていられる幸せを感じております。
今迄御指導頂きました芹川先生をはじめ、塾の先輩の方々に心より御礼申し上げます。


奨励賞

有線七宝蓋物「細葉ひいらぎ南天」 石坂久美子(諸工芸)

この度は奨励賞を頂きまして誠に有難うございます。嬉しく思っております。
私はいつも身近にある植物をモチーフにして、作品を作っています。
今回はとがった細い葉の重なりと黄色の小さな丸みのある花との対比が面白く、さわやかな感じを出したいと思いました。
有線七宝は、銀線による表現が大事だと思い、銀線を丁寧に付けることを心がけています。
色は、七宝釉薬をほうろく合わせして、独自の色を作って差しています。
最後の研磨は、十二段階の砥石を使い分けて仕上げました。
この受賞を励みに、もう少し頑張っていきたいと思っております。