日本工芸会東日本支部

第57回東日本伝統工芸展 受賞者のコメント

東京都知事賞

朧銀地象嵌匣「丁夜」 奥村公規(金工)

この度は第52回展の東京都知事賞に続き、2度目の東京都知事賞の知らせに大変驚いております。ありがとうございました。
鎌倉期にはすでに存在していたとされる四分一(しぶいち 銅・銀合金)の魅力に惹かれ作品づくりを続けてきましたが、まだまだその魅力を引き出すまでには至りません。扱いづらい材料ですが、その分魅力たっぷりです。いつの日に満足の行く作品にしたいと思います。
今回の作品は冬の凍てつく深夜、どこまでも澄み切った無音の世界に星の息遣いを感じる情景を表現してみました。
これからも素材の魅力を十分生かした作品づくりに精進して参ります。無言で教えてくれる過去の作品に感謝いたします。


岩手県知事賞

紬織着物「雨に咲く」 山本千秋(染織)

このたびは岩手県知事賞という栄誉ある賞を頂戴いたしまして、有難うございました。
織を始めてからずっと絣を織り続けてきましたが、最初の頃は緯絣、近年は経絣が中心でした。最近の作品はややマンネリ化しているという自覚があったため、今回約10年ぶりに経緯絣に挑戦しました。いざ始めてみると作業が思いどおりに進まず、反省の多い作品になりました。
それでも紫陽花の意匠がとても気に入っていたことと、苦労して制作したという思いもあって応募いたしました。入選、ましてや賞をいただけるとは思いもしませんでした。
この受賞によって制作に対する不安が消え、新しい挑戦への意欲を与えていただきました。心より感謝申し上げ、これからも日々精進してまいりたいと存じます。


朝日新聞社賞

彩色線紋陶筥 舘真由美(陶芸)

この度は、思いもよらずこのようなすばらしい賞をいただきまして、誠にありがとうございます。
この作品は、工房がある里山の自然を表現いたしました。
日々うつろう木々の色
杉林に降る雨
おだやかな山の稜線
そんな美しい自然を少しでも作品に投影したいと制作いたしました。
陶芸をはじめて今年で28年になります。まだまだつたない技術ではありますが、自然の織りなす美しさを表現できるよう、日々努力し、精進してまいりたいと思います。


日本工芸会賞

彩変化花籃「岳」藤塚松星(木竹工)

この度は日本工芸会賞を頂き、誠にありがとうございました。 今回の作品は長年に亘って追求してきた「彩変化」の技法によるものです。今までは、どちらかと言えば見る角度の違いによる色彩の変化の面白さを狙って来たのですが、今回はそれよりも「形の面白さ」を追求してみました。 
真上から見ると不等辺六角形ながらシンメトリーなのですが、側面から見ると不規則な形をしております。とりわけ縁は今までの花籃には余り無かった非常に鋭角で、激しい凹凸をしています。実はこの部分がどう評価されるのかが不安だったのですが、受賞はその思い切った挑戦を評価して頂けたと言うことだと思いますので大変嬉しく、鑑審査の先生方に心より感謝申し上げます。
ただ、細部に亘っての技術的、デザイン的な詰めはまだまだ甘い点がありますので、今後はその点の改善を図り、失敗を恐れず、更に新しい「かたち」に挑戦していきたいと、意を新たにしているところです。


根津美術館館長賞

木芯桐塑嵌込「雪のあさ」 小島尚子(人形)

この度は名誉ある素晴らしい賞をいただきまして、ありがとうございました。
たくさんの人に支えられ、今日まで人形づくりを、続けてきたからこそ、迎えられた幸運だと思います。
今回の作品は、袖のない半纏部分は、草木や岩絵の具で染めた紬織を、嵌込という技法で、着物部分は、染織を習っていた時に織った紬織を、木目込という技法で仕上げました。
手染の布や糸を使用することで、古裂とはまた違った、柔らかい温もりのある、作品になったと思います。
これからも、この喜びを忘れることなく、見る人の心に届く、見る人が共感できる、人形をつくることを、心掛けていきたいと思います。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。


MOA美術館賞

乾漆蒔絵宝石箱「桜雨」 工藤隆志(漆芸)

この度はMOA美術館賞いただきありがとうございます。東日本展(前新作展)に出品をはじめて、40年以上続けてきました。現在の作品があるのはその継続があってこそ、と最近は強く感じております。作品発表の機会、研究の場を与えていただき工芸会には感謝申し上げます。
今回の作品は箱(乾漆)の形と装飾デザイン(蒔絵、螺鈿)の調和、素材(金粉、銀粉、薄貝)の持ち味をいかに生かすかを特に意識して制作しました。そして指輪を入れる箱としての機能性をもたせてあります。手元に置いて実際に使い楽しんでいただきたい作品です。
歳はだいぶ重ねてしまいましたがこれからも、もの作りに丁寧に向き合い自分のペースですこし頑張って行きたいと考えております。
今後ともよろしくお願いします。
ありがとうございました。


三越伊勢丹賞

有線七宝蓋物「花馬酔木」 井谷多賀子(諸工芸)

この度は、三越伊勢丹賞をいただきましてありがとうございます。
今回の制作は、熱による歪みとの戦いでした。胎の形状からなのか、焼成を重ねるにつれ側面の部分が5ミリ程開いてしまい、研ぎで懸命に修正を試みるも、矢張り無理で、結局一から作り直しました。
難しい形の胎でしたが、この形だからこそ馬酔木の文様が自然な雰囲気で引き立ったように感じます。
この受賞を励みとし、一層精進して参ります。これからも、清楚で、味わい深い、心にすっとなじむような七宝作品を作ってゆきたいと思っております。


川徳賞

神代﨔彩線象嵌の器 桑山弥宏(木竹工)

この度は川徳賞を頂き誠にありがとうございます。
作品名にもある神代﨔というのは器本体に使いました深緑色の材のことで、地中に埋もれ数百年~数千年かけこの様な色へと変化した欅のことです。
その神代﨔の柾目部分(真直ぐな木目)を選び、発色の良い黄楊の細線と象牙の小丸を象嵌しています。
素地の抑えた色味に彩りを与えるという意味を込め彩線象嵌と名付けてみました。
台枠と縁には器としての保護と作品を引き締める効果を狙い硬く色の濃い紫檀材を廻し、板と板を組み合わせ作るる指物という技法を用い組み立てています。
近年このような彩線を重ねることでできる紋様を試行錯誤してまいりましたが、この度のご評価、大変嬉しく励みになりました。
より精進してまいりますので、ご指導の程宜しくお願い申し上げます。


日本工芸会東日本支部長賞

面取釜「樹聲」 江田蕙(金工)

茶釜を制作するにあたり茶道の約束事として、定められた寸法と実用性を必要とします。茶の湯の長き時代の中で、釜はありとあらゆる造形美を現わしてきました。
この窯は時の流れの中で深山に座し風雨にさらされ姿を変えながらもその存在の神聖さを誇る大樹の一塊を表現出来ればと取り組み創作してみた作品です。
これまでにこだわってきた和銑という材質の良さに加え、面取り・膚替り・非対象等の技法も取り入れ、重厚感や沈静感を表現出来ればと考えました。
この新たな挑みで創作した釜に評価を頂いた事は大変嬉しく今後の活動の励みになりました。本当にありがとうございました。


奨励賞

青瓷楕円変形組鉢 三上慶耀(陶芸)

この度は栄えのある賞を頂きましてありがとうございます。このような素晴らしい賞を受賞する事が出来ましたのも、ひとえに先生方をはじめ先輩方のご指導と日頃より応援して下さる地元の皆様のおかげだと心から感謝しております。
今回の作品は、北国の大地鹿追の雪の形と地元、然別川に咲き並ぶ桜の美しい色に感動を覚え、それを作品で表現出来たらと思い制作致しました。
地元の土に陶石などを混ぜて胚土とし釉薬を掛け1230度で焼成しました。
青白い雪の静謐から、少しずつ近づく春を感じて頂けると嬉しいです。
この受賞を励みにし、今後も努力してゆきたいと思っています。


奨励賞

藍型染着物「花径」 古屋恵代(染織)

この度は奨励賞を頂きまして、ありがとうございました。思いもよらぬことで驚きと喜びでいっぱいです。
この賞をいただけたのもひとえに先生のご指導と先輩方の励ましがあってのことと深く感謝しております。
友人の家に遊びに行った時、ハナニラとすずらん水仙の白い花が庭一面に咲いていました。小さな花たちが、みんなでいっせいに咲くことで優しい清らかな世界を創り、こちらを幸せな気持ちにさせてくれることに感動しました。
この花たちを表現したいと思い、今回の作品を制作しました。
図案を考え、型を彫り、糊を置いた後に花芯や葉に色を挿し糊ぶせして、藍甕に入れました。
まだまだ課題は多く、これから一つ一つ乗り越えていかなければと感じております。
今回の受賞を励みに精進していきたいと思います。


奨励賞

蒔絵六角香合 浅井康宏(漆芸)

この度、第57回東日本伝統工芸展において奨励賞をいただき、とても嬉しく思います。
今回の作品は継続して取り組んで来た多素材表現の蒔絵と、造形が無理のない形で一つの器物におさまり、自分としても納得のできる作品となりました。
しかし、小さな作品だったため賞をいただけるとは全く想像しておりませんでした。
東日本支部の先生方からは「出品し始めたら休まず続けなさい。」と助言をたくさんいただいて来ました。どんな時も自分の最善の仕事を心がけるためにも継続が大きな力となっています。
日本美術=工芸という流れも強く感じる昨今、より一層日本文化の本流に根ざした新しい表現を目指してゆきたいと思います。この度は本当にありがとうございます。


奨励賞

木目金花瓶 玉川達士(金工)

この度は、奨励賞を頂き誠に有難うございました。
木目金は異種・数種の金属板10枚~30枚を積層し、鎔着した塊を板状に延ばし、その表面を削ることで模様を作り成形していく技法です。
今回の作品は銅・銀・赤銅の3種類の金属を17枚使いました。形は鍛金らしいふっくらしたもの、模様はその形に合ったものをと考えて制作しました。
木目金は「計算半分、偶然半分」と言われるように、なかなか思い通りにはいかない難しさがありますが、これからも形と模様のバランスを考えながら、より良い作品を制作したいと思います。
今回の授賞を励みとし、日々精進し制作を続けてまいります。
本当に有難うございました。


奨励賞

御蔵島桑三杯抽提箱 島崎敏宏(木竹工)

46年前、父と一緒に此の伝統工芸展に出品し始めたが、父も15年前に亡くなり、其の頃から自分がやっている「江戸指物」の技術・文化を残さなければと言う使命感的な思いが漲り、作品作りをして来た結果、賞など無縁の散々たるもので「鳴かず飛ばず」のものでした。
「江戸指物」とは江戸文化と共に発達した木工技術と精神美であり、自然杢を生かした作品作りが基本になっている。寄木・象嵌の千代紙的な平面美に対し、杢目の美しさには奥行を感じる立体美で有る、しかも日本は「木の国」であり、銘木屋と称する商いが西洋に有るだろうか?自然破壊が騒がれている今日、銘木も少なくなっているのも事実だが現在出来る範囲で努力するのも伝統技術文化を残すには必要ではないだろうか。
今回の此の地味で目立たない仕事「江戸指物」の標語にもなっている「外は木綿でも内は絹」を奨励して頂いた事は少しの日差しを感じ、「残滓(のこりかす)」と言わせない様に「江戸指物」の技術・文化を大切にしようと思っている。


奨励賞

木芯桐塑紙貼「風の族」 原山桂子(人形)

今回思いがけずに奨励賞を頂いた事に、本当に有難く、嬉しく思いました。
人形部門は、当たり前ですが、人の形が基本にある物なので、その中で自然の事柄などを表現してみたいと考えると、とても難しくていつも悩んで居ります。
私の住んでいる辺りは、本当に長閑で、犬の散歩中に、尾長が4、5羽群れて飛びまわっているのを見て、まるで黒のキャップを被ったやんちゃな男の子みたい、と思ったのが作品を作るきっかけでした。
これからも何とか自分なりの物を創っていけたらと想っています。
そして先輩をはじめ、諸先生方に心より御礼を申し上げると共に、今後もご指導下さいますよう宜しくお願い申し上げます。
本当にありがとうございました。


奨励賞

有線七宝蓋物「浅緑」 高木ゆう子(諸工芸)

この度は奨励賞をいただき、誠に有難うございます。思いもよらない受賞に、とても驚き恐縮するとともに、大変嬉しく光栄に思っております。
子供の頃に七宝に魅せられ、回り道の後、厳しくも温かい師のご指導のもと、ここまで来られたことを深く感謝致します。
銀有線七宝は、銀線と多彩な色の美しさが魅力であり、同時に難しさでもあると思っております。
今回は銀線を多用して、葉や木に見立て数輪の花を散らしました。葉の輪郭に少し厚めの線を使い、二種類の銀線を使うことで、強さと表情をつけました。
葉の色は、薄い緑のグランデーションを使いたいと思いました。きれいな色を使いながら、美し過ぎない落ち着きのある華やかさを出したいと苦心しました。
七宝は私にとって、苦労が喜び、難しさが楽しいという不思議な世界です。
この受賞を励みに、より一層、努力して参りたいと思います。
ほんとうに有難うございました。