日本工芸会東日本支部

第59回日本伝統工芸展 初入選者による作品解説

現代日本の優れた工芸技術と美の粋を集めた公募展「第59回日本伝統工芸展」が2012年9月19日(水)より、日本橋三越本店で開催されました。
以下は、本展に初めて入選した、東日本地域在住の作家自身による作品解説です。


飯沼 耕市

銀泡彩鉢  陶芸(No.5)

今回の作品は、手捻りで成形した鉢です。
素焼き後、黒マット釉を掛け、1260度で本焼きをし、次に、全体に銀彩を施して、720度で焼成します。
部分的に銀を溶かし、泡のように銀と黒が混濁した微妙な表面と造形を融合し「火の中から生まれる儚い水の泡」を表現した作品です。


及川美智子

白磁壺 陶芸(No.33)

ふくよかさ、柔らかさ、静けさ。素っ気なくただそこに在るだけで美しく感じるような空気をまとった形を求めながら制作しました。
磁土を使いロクロ成形をし、内から外へと膨らんでいるイメージを大切にしながらよりフォルムがいきるようラインを削り出し、その陰影で形にアクセントを付け、乾燥後、素焼きをし白マット釉を掛け、酸化焼成しました。


笠井咲江

彫花白連図組鉢 陶芸(No.47)

白い蓮の花が、夏の朝の光と静けさの中で咲いてゆく様子を、5枚の組鉢で表現しました。
磁土を用い、形は高台を少し高く細くして、そこから緩やかな曲線を描いて広がり、蓮の持つ伸びやかさと柔らかさをイメージしています。
模様は、やや艶を抑えた白磁釉と、青白磁釉の二色を使い、花の部分を前に彫り出し、葉の部分を後ろに彫り下げ、彫り下げた部分に青白磁釉をのせ ています。
植物が持つ、強さ、柔らかさ、生命力、その周りにある空気、少しでも何かを感じて頂けたら、嬉しく思います。


佐藤典克

白磁大鉢 陶芸(No.86)

私は日々の制作のなかで色を用いた器をよく作っています。そんな色絵の仕事では見えにくくなってしまうカタチが、逆に強調される白の器に恐さと魅力を感じています。
今回の作品「白磁鉢」に施した網代紋の地模様は、水気を弾く効果のある撥水剤を用いて線を描いて、そこに釉薬と水と磁器土を混ぜた泥状のものを刷毛で重ね塗りしました。先程の撥水剤の効果により、泥状の液体が定着するところと、弾かれるところができ凸凹した表情ができることを利用しています。
これからも「繊細かつ力強く、ふくよかでピリッと」そんなイメージで自分らしい表現を探していきたいと思っています。


高津潤一郎

亜鉛結晶釉組皿 陶芸(No.106)

釉薬の原材料に亜鉛を用いることで、作品の表面に螺鈿のような結晶を作り出す「亜鉛結晶釉」の組皿です。
釉の魅力である美しい結晶を、より大きく多彩に魅せられるよう器の形状を考慮し縁(ふち)の釉を際立たせる額縁に見立て、網目文様で装飾し制作しました。
揃いの組皿でありながら、観方によって多様に変化する結晶釉の皿達の表情をご覧下さい。


冨樫富記子

捻り組皿 陶芸(No.123)

今回の作品は、土を捻ることによって出来上がる、柔らかい光の集まり(陰影)を意識して造形して居ります。
ロクロ形成後は、カンナ削り仕上げによって作成して居ります。仕上げは美しい双曲面がシャープに交わるよう表現してみました。


冨川秋子

氷青釉組鉢 陶芸(No.126)

五客の組鉢を制作致しました。
磁器土を轆轤成形し、削りで輪郭を整えます。素焼きの後に、すり硝子に似た手触りの、半透明の青色になる釉薬を施し、酸化焼成します。
この青色は、幼い頃に写真で見た、南極の澄んだ氷の色から着想を得ています。その氷に触れてみたいと、焦がれた先にあった色です。形は、凛々しくしなやかな輪郭に仕上げたいと思いました。
鉢を重ねたときにも、立ち姿がすっきりと見えるように心掛けました。また、光の加減で透明感のある青色の階調が生まれます。
涼しく柔らかな気配を感じていただけたら嬉しく思います。


浜岡満明

光輪文黒器 陶芸(No.149)

光の表現がこの作品のテーマです。
ロクロ成形後、側面から口縁部へと続く削りを施し、黒く発色する泥漿(水分のない液体状の粘土)を吹き付けます。
その際に細かいマスキングと備前焼の「牡丹餅」の技法の応用により、器の中に光の文様を出現させています。
造形的な面白さと文様の美しさ、そしてその一体感。伝統的な技法を元にした、自分なりの新しい表現方法。
そういったことを考えながら制作しています。


石垣 覚

朧銀花器「蒼古」 金工(No.386)

自然の持つ形を参考に制作しています。
植物の種の形を見て、その丸みと面取りされたような平らな面のある形がおもしろいと感じ、それをヒントに造形しました。
蠟型石膏鋳造という技法を使っています。まず、粘土で造形し、それを型取りし蠟に置き換えるのですが、そのときに中空の器型にします。それを石膏の鋳型でくるみ、蠟を流し出し、そこに溶けた金属を鋳込みます。それを研磨し、表面処理をして制作しています。


五十嵐 誠

神代杉飾箱 木竹工(No.443)

今回の作品は神代杉を使って指物技法で作りました。特に天板の曲線の制作に注力し、モデリングをしたところ、曲線を重ねる事により生まれる美しさの可能性を見つけ、それを側面の彫りこみに活かしました。また、側面以外の面には真っ直ぐな木目を使用して、彫りこみの面を際立たせるために縁に桂材をあしらいました。
今後も本展への出品を通じて、自己表現と技術向上を目標に作品制作に励んでいきたいと思います。